沖縄懐石 赤坂潭亭 ゆったりと時を刻む、美しい沖縄との出会い
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1月 赤飯(あかめし)

 古代より赤は邪気を払う色として、神事や祝い事に意味を込めて使われて来ました。年の初めの一月は、赤坂潭亭のご飯も沖縄のあか飯とさせて頂きました。
 あか飯とは、石垣島や西表島で作られている黒紫米(こくしまい)を白米に混ぜて炊いたものです。黒紫米とは、古代米を復刻したもので細長いインディカ米の一種です。

 赤坂潭亭で使用している黒紫米は、西表島で栽培されているものを使用しています。米そのものは、紫がかった黒色で、餅味があるのが特徴です。黒米(くろごめ)と呼ばれることもあります。野生種に近いことから、農薬もほとんど使用せずに栽培されています。
近年、赤ワインに含まれるポリフェノールの抗癌作用が話題になりましたが、この黒紫米の色素にもポリフェノールが含まれており、薬膳やお菓子の色素としても使われるようになりました。

 赤坂潭亭では、この黒紫米を洗ってから一晩、水に漬けて置き、十対一の割合で白米に混ぜ、出汁昆布を入れて炊きあげます。
石垣島でこの黒紫米の田んぼを訪ねたことがありますが、普通の米に比べて、稲穂の背が高いのに驚きました。小学生の背丈ほどと申し上げたら良いでしょうか。しかしそれ故に、倒壊する稲が多く、反当たりの収穫は二百キロ程度と少ないそうです。反当たり、二百キロ。数字を並べてみても東京の下町育ちのわたくしには想像もできませんが、普通 のお米なら反当たりどの位収穫出来るのでしょうか。

 この黒紫米は、古代米を復刻した方が東北の米処から順次作付けしたそうですが、うまく行かず次第に南下して沖縄の石垣、西表島で初めて着床したそうです。それ以降、沖縄の特産物として盛んに栽培されるようになりましたが、現在では京都や岡山、千葉などでも盛んに作られています。
 黒紫米はもはや沖縄だけのものではなくなった訳ですが、中国の山間部では今でも神に捧げる米として作られていると聞きました。アジアの何処か、あるいはもっと遠くオリエントから海を渡ってヤマトに渡来し、沖縄にやってきたものでしょう。
 この米が現代に復活したのは、この米のもつ秘めた力、強い色素が時代に呼応したからではないかと思われます。黒紫米がこの飽食の時代に蘇り、何を語りかけているのか、耳を澄ましてみたいと思います。

 畦道を歩いていると、ふいに黒い稲穂が大きく揺れます。島を渡る風にざわざわと音たてて揺れる黒い稲穂の様子は荒ぶる神を思わせてふと足を止めました。
 ざわざわとした風の音は一瞬、田んぼを『あか』と呼び、農民を『あこうど』と呼んだいにしえの世に誘ってくれます。
 正月にあか飯を炊き上げるたびに、あの日の音立てて揺れる黒い稲穂を思い出します。
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