3月 彩飯(セーファン)
今月は雛祭りにちなみ、潭亭のご飯も彩 りゆたかな彩飯にしました。彩飯は、雛祭りに限らず、特別な時につくる、見た目にも美しいおもてなしのご飯です。鶏肉や椎茸、錦糸玉
子や蒲鉾、いんげんなどをご飯の上に彩りよく盛って、温かいだし汁をかけて食べます。彩飯という名前や盛りつけからして、中国の影響を色濃く残した料理と言えます。今月のご飯、彩飯から少し離れますが、ここで沖縄の雛祭りについて少し触れてみます。
今では沖縄でも女の子のいる家庭では、ごく普通に雛人形を飾る風習が受け入れられ、本土化していますが、少し前の沖縄では、三月三日の雛祭りを「サニジ」といいました。
本土の雛祭りは、女の子の無事な成長を願って、災疫を人形に託して川に流し、やがてその人形を飾って祝うようになったものですが、沖縄のサニジは、女たちの浜下りの習わしでした。
三月三日、娘たちは菱形に切ったよもぎ餅を仏さまや火の神様などに供え、海に下りて足を濡らすのです。貝やもずくやアーサなどの海藻採りをして、夜はその貝や海藻で御馳走を作って楽しみました。
八重山の暮らしを記録した<八重山生活誌>には、三月三日の浜下り伝説の由来が次のように記されています。
昔、あるところに美しい娘がいました。その娘のところには赤い手拭いで頬かむりをした若い男が夜な夜な通 ってきました。
娘が身篭ったことを知った母親は、娘をただしました。娘からその男の話を聞いた母親は驚いて、自分の紡いでいる麻糸を針につけて男の髪に刺すようにと言いました。娘はその通 りにしました。翌朝、母親がその麻糸を辿っていってみると、糸は岩穴に入っていました。中から話し声が聞こえます。
「俺は人間の腹に種を宿してあるから、例え針を刺されて今死んでも悔いはない」
「人間は利口だから海へ下りて、とんだり跳ねたりしてお前の種をすっかり堕ろしてしまうだろう」
恐る恐る母親が中を覗くと、頭に針を刺されたアカマターが唸っていました。それから娘たちの三月三日の浜下りが始まったということです。〔アカマターとは蛇の一種〕
沖縄のサニジは、潮の香りのする南の島の力強い野生を嘔う女の節句なのです。本土の雛祭りとはだいぶ趣が異なります。しかし、本土の雛祭りも子細に見つめてみると、土地土地の姿を写 した女たちの歴史が秘められているのではないかと思われます。
