沖縄懐石 赤坂潭亭 ゆったりと時を刻む、美しい沖縄との出会い
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11月 島菜ご飯

 赤坂潭亭では、これまで沖縄固有の野菜とヤマトの野菜を区別 するために、沖縄野菜を島野菜と呼んできました。「苦みと香りの島野菜」、あるいは「薬菜讃歌」などと申し上げて、沖縄には、あの太陽と赤土に抗って育ってきた力強い個性的な島野菜がありますとご紹介してきました。
 では島菜(しまな)は、その個性的な沖縄野菜を代表するものかということになるのですが、島菜は実は、決して沖縄を代表する野菜ではありません。ヤマトでもごく普通 に手にすることが出来る野菜です。芥子菜の一種で高菜と呼ばれているものです。九州の福岡では、煮るとよく味がでることからカツオ菜とも呼ばれています。

 いつからこの高菜が沖縄で島菜と呼ばれるようになったのかは定かではありませんが、亜熱帯の沖縄では季節を問わず、栽培が可能で容易なことから島菜と呼ばれるようになったのかも知れません。
 春先、目を凝らすと東京都内でも鉄道の沿線や河川の堤防に黄色い花をつけて自生しているのをみかける位 、その生命力は旺盛です。
 食材図典によると、原産は中央アジアとされています。ヤマトには九世紀に渡来していたことは確かなようでカラシナの名で栽培されていました。沖縄にはおそらくヤマトに渡来するよりも早く、中国を経て入っていたのではないでしょうか。

 沖縄ではこの島菜をさっと塩もみしたものをチキナーと呼んで、漬物にしたり炒めものにしたりして頂きます。島菜が塩もみ、あるいは塩漬けにするとなぜチキナーと呼ばれるのか不思議でしたが、漢字を思い浮かべて合点が行きました。おそらく漬け菜からチキナーになったのでしょう。
 ポークと呼ばれる缶詰と豆腐や人参とこのチキナーを炒めたものがチキナチャンプルー。沖縄の代表的な家庭料理のひとつです。さっぱりとした塩あじで、ご飯の進む副菜です。

 別の項で「食はクスイムン」という、沖縄の食に関わる諺について触れたことがあるかと思います。食は薬物。食べることで身体を整えるという、まさに「食」の本質を捉えた言葉です。沖縄の食の思想と言っては言い過ぎでしょうか。
 近代まで医師や医薬の届かない暮らしを強いられた島の暮らし。民間伝承には違いないのですが、古老たちは実に食物の薬効に詳しく、島では今もこの諺は暮らしに活きています。
 島菜は風邪の引きはじめに、その葉や茎を食べると良いと教えてくれました。身体を温めるというのです。
 赤坂潭亭ではその教えに従ってこの季節のご飯を島菜ご飯としました。
 チキナーの葉茎を細かく刻んだものと、湯通しした薄揚げを醤油、酒、味醂で味を整え炒り煮にします。それを焚きあげたご飯にさっくりと和えて白胡麻をふります。香の物として昆布の辛煮を添えてみました。
 ちなみにこの島菜は沖縄本島ではシマナーですが、宮古島ではミャークナー、アカナー、奄美島ではミスナと呼ばれています。
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